植物フェノタイピングとは何か
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温室でトマトを育てたことがあれば、思い当たるはずです。同じ袋の種を同じ日に 播いても、二本の株がまったく違う姿になることがあります。片方は背が高く ひょろりと伸び、もう片方は背が低く実を重そうにつけている。遺伝子は同じなのに、 結果は違う。
この差こそが、フェノタイピングの対象です。
遺伝子型と表現型
植物の遺伝子型(ジェノタイプ)とは遺伝情報そのもので、種の段階で決まり、 どの細胞でも同一です。一方表現型(フェノタイプ)とは、その植物が実際に どうなったかを指します。どれだけ伸びたか、葉を何枚つけたか、その葉がどれだけ 光を受けたか、いつ実をつけたか、寒い夜や乾いた一週間にどう応じたか。
表現型とは、遺伝子型にその植物に起きたことすべてを足したものです。温度、光、 水、養分、整枝、病害圧——そのすべてが表現型に現れます。
これが重要なのは、表現型こそ生産者が働きかけられる部分だからです。土に播いた 種を後から変えることはできませんが、環境、灌水、整枝の計画は変えられます。 その判断が効いているかどうかを知るには、植物を測る必要があります。
何を測るのか
フェノタイピングとは形質(trait)を測ることです。観察でき、数値で表せる 植物の性質を指します。温室で重要になるものをいくつか挙げます。
- 草丈 — 栄養成長の速さを直接示す値。
- 葉面積 — 光合成に使える表面積の目安。
- 茎径 — 樹勢と、支えられる着果量の指標。
- バイオマス — 蓄積した成長量の総体。
- 果実数と果実サイズ — 実際に出荷される部分。
一度測れば得られるのは一枚のスナップショットです。しかし作期を通じて数日おきに 測れば、生育曲線が得られます。こちらのほうがはるかに有用で、今どの状態かだけ でなく、どこへ向かっているか、そして先週の灌水の変更に意味があったのかまで 教えてくれます。
なぜ難しいのか
私の研究の出発点はここにあります。これらの数値を集める従来のやり方は、人が メジャーと定規とノートを持って温室に入ることでした。
この方法には三つの弱点があります。
規模に耐えない。 一株を丁寧に測るには数分かかります。商業温室には数千株が あります。すべてを測る人はいないので、少数を抜き取り、それが全体を代表すると 仮定するほかありません。
ばらつく。 実の重みで曲がった株の「先端」はどこでしょうか。二人が測れば 二通りの答えが出ますし、同じ人でも金曜の夕方には違う値を出します。生育速度の わずかな変化を追っているとき、この測定のばらつきが見たい信号を覆い隠します。
破壊的である。 バイオマスや葉面積を最も確実に測る方法は、株を刈り取り、 乾燥させ、重さを量ることです。優れた測定値が一つ得られ、そして株は失われます。 同じ個体の成長を追い続けることは、これで不可能になります。
最後の点が最も厳しいところです。作物科学で本当に面白い問いは変化について—— 数日から数週間で植物がどう応じるか——であるのに、最も正確な従来法は、追いたかった 対象そのものを壊してしまいます。
もう一つの道
素直な発想は、定規をカメラに置き換えることです。画像を撮り、植物を3Dで 再構成し、植物そのものではなく再構成を測る。何も切らずに済み、同じ株を毎日 測れて、歩き回る作業はロボットに任せられます。
私の研究はおおむねこれを行っており、発想としては正しいものです。ただし、実際に 試すまで気づきにくい新しい問題が生じます。通常の写真から作った3D再構成は、 植物の形状は忠実に復元しますが、その大きさは不定のままです。同じ株を 火曜と金曜に再構成すると、二つのモデルは異なるスケールで出てくることがあります。 植物が変わったからではなく、再構成そのものが「1センチメートルがどれだけか」を 知らないからです。
つまりセッション間で計測値が動いてしまい、また信号がノイズに埋もれる状態に 戻ってしまいます。
この問題と、その対処法が、次の数回の主題です。
本記事は、研究の背景にある考え方を紹介する連載の第1回です。次回は、普通の 写真からコンピュータがどのように植物の3Dモデルを作るのかを扱います。
